懐かしさを感じる雨の香りの正体。7種の雨の香水もご紹介

曇り空の下「降りそうだな」と、肌や鼻で雨の予感を感じることはありませんか?濡れた土やアスファルトを思わせるあの香りに、どこか懐かしさを抱く方もいるかもしれません。

それは「ペトリコール」と呼ばれ、土っぽさや湿った雰囲気のある香りとして知られています。香水の世界で取り上げられることも少なくありません。

そこで今回はペトリコールの正体や香水の世界での雨の表現、さらには雨をモチーフにした香りをご紹介します。

雨の匂いの正体

冒頭でも触れたような、あの雨の匂いは「ペトリコール」と呼ばれ、オーストラリアの研究機関の科学者が発表した論文から生まれた言葉。ギリシャ語で石を意味する”Petra”と神々の血を意味する”Ichor”を組み合わせた造語です。

では、どのようにしてこの「石の血液」を発見したのでしょうか?

「雨の香り」が発見されるまで

誕生の経緯として、1964年3月7日、科学者イザベル・ベアとリチャード・トーマスが科学雑誌「Nature」に「Nature of Argillaceous Odour(粘土質の香りの性質)」という論文を発表し、ペトリコールを初めて記述しました。

「干ばつに見舞われた牛がこの『雨の香り』に対して落ち着かない反応を示す。」という現象論文の冒頭に記述したことから、雨の香りの存在を示唆しました。

インドの香水業界ではその香りがサンダルウッドに近いという認識をしていたものの、その原因の解明には至っていませんでした。そこで、科学者たちはその起源を特定し記述することを決意しました。

研究では暖かく乾燥した空間にさらされた岩石を蒸留。そして香りの原因となる黄色い油を発見しました。この油は通常岩石や土壌に閉じ込められており、水分によって放出されるものでした。

こうしてペトリコールが発見されました。

ペトリコールが鼻に届くまで

ペトリコールは、雨の前兆となる湿度の上昇によって石の細孔に微量の水が入り込むことで生じます。さらに雨が降ることで、雨粒が地面や石と接触するとさらに香りが放たれ、風に乗って拡散が起こります。

雨そのものの匂いではなく、雨によって石が含んでいる香りの成分(香気成分)が私たちの鼻に届いているようです。

なお、2015年にはマサチューセッツ工科大学の科学者チームが、このペトリコールが拡散される過程について、超スローモーションビデオで公開しています。

ご興味のある方はぜひご覧ください。

そんな雨の匂いは香水の世界ではどのような雨の表現をしているのでしょうか。NOSE SHOPで見つけることのできる雨の香りをご紹介いたします。

NOSE SHOPで見つかる7つの「雨がテーマの香り」

香気成分「ゲオスミン」が入った香水
Etat Libre d'Orange|エルマン(もう一人の自分)

Etat Libre d'Orange|エルマン(もう一人の自分)

暗闇の森で2人の騎手のうち一人が答えた。「隣りのエルマンは、私の影のようだった。」(ユーゴー)私達は皆、良心、魂、エゴ、「人生の同伴者」=影を持つ。そこに不気味で爽やかな官能が渦まく。

トップ|ブラックペッパー、ガルバナム、ブラックカラント
ボディ|インセンス、ゲオスミン、ローズ(Abs)
ベース|ベチバー、パチョリ、アンブロックス

パフューマー|クエンティン・ビスク

取扱店舗|NOSE SHOP 新宿、渋谷、池袋、麻布台、有楽町、銀座、横浜、名古屋、大阪、神戸、札幌、福岡、オンライン

【コメント】
先ほどご紹介した、雨の香り「ペトリコール」の重要な香気成分の一つには「ゲオスミン」(ジェオスミン)というものがあると言われています。
エルマンではゲオスミンを香料として採用することで、薄暗い森のようなダークでゴシックな雰囲気を作り上げています。

ヴィクトル・ユーゴーの詩、「二人の騎手は森で何を考えていたのか」をテーマに、「全ての人に存在する影」を香水に閉じ込めたアイテム。ゲオスミンを効果的に用いて、影の輪郭を描き出したようなアイテムです。

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アイリスによる「雨」の表現
Elisire|プードルデジール(純粋な女性らしさのエッセンス)

Elisire|プードルデジール(純粋な女性らしさのエッセンス)

雨上がりのきらめく太陽の下で咲く繊細な花の優雅なオーラ。謎めいたアイリスの香り。柔らかいシダーウッド。バニラのようなヘリオトロープ。官能的なムスク。神々しく、上品で、抗えないほど愛らしい。

トップ|ベルガモット(カラブリア産)、マンダリン、ピンクペッパー
ボディ|アイリスアブソリュート、エジプシャンジャスミンインフュージョン、ジャスミンの花びら、ガーデニア
ベース|ムスク、シダーウッド、ヘリオトロープ

パフューマー|アルベルト・モリヤス

取り扱い店舗|NOSE SHOP 麻布台、有楽町、銀座、札幌、オンライン

【コメント】
雨上がりの太陽の下で咲く花をイメージして作られたこの香りは、雨が上がった冷たい空気の中に咲くアイリスとクチナシ、ふんわりと優しいムスクの香り。

香水の世界では、アイリスとバイオレットを古くから雨の表現に使用してきました。例えば、雨上がりをモチーフにした香水として知られる、老舗ブランドのゲランが発表した「アプレロンデ(驟雨の後で)」は、アイリス、バイオレットにアニスのしっとりとしたパウダリーな香りで、雨上がりの空気を表現したアイテムです。

本作ではアイリスとジャスミンがふんわりと柔らかく香り、雨上がりを表現しました。

調香を手がけたのはアルベルト・モリヤス。カルバン クラインのCK1など名香を作り続けてきた、レジェンドパフューマーです。彼らしい、細部まで作り込まれながらも王道を外さない柔らかな香りになっています。

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雨上がりの庭園をモチーフにした
Amouage|レフレクション ウーマン 


雨の庭園。透き通る池の周りにすみれ、マグノリア、ジャスミン、イランイランが咲き誇り、花々を包むアンバーの上からフリージアが香る。朝日に照らされたムスクとシダーウッドのそよ風が庭に魔法のオーラを与える。

トップ|ウォーターバイオレット、フリージア、トロピカルグリーンリーフ
ボディ|マグノリア、イランイラン、ジャスミン
ベース|アンバー、ムスク、シダーウッド、サンダルウッド

パフューマー|モーリス・ルーセル

取り扱い店舗|NOSE SHOP 麻布台、銀座、神戸、福岡、オンライン

【コメント】
中東オマーン発、王の命によって創設されたラグジュアリーなニッチフレグランスブランドのAmouage。瑞々しいウォータリーバイオレットにトロピカルグリーンリーフの青々とした葉っぱのイメージ。そこにソフトなマグノリアとジャスミンが重なった雨上がりの庭園を散歩しているような香水です。

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森の中でそよ風が頬に運ぶ雨
Bdk Parfums|ウッドジャスマン

Bdk Parfums|ウッドジャスマン

背の高い木々の茂った森を歩くと、金色に輝く奇妙な光が現れた。風に吹かれた雨が頬を濡らす。夜が明ける前にそこを去らねばならない。そこはゴージャスで神秘的な森。

トップ|プラム、ペアー
ボディ|ジャスミン(エジプト産)、サンバックジャスミン、バラ(トルコ産)、ダバナ
ベース|インセンス(ソマリア産)、バニラ(マダガスカル産)、パチョリ(インドネシア産)、ラブダナム(スペイン産)、ナガルモタ(インド産)

パフューマー|カミーユ・ルグアイ

取り扱い店舗|NOSE SHOP 渋谷、麻布台、オンライン

【コメント】
フランス、パリを拠点とする「ストーリーを語る香水」を目指す香り作りを行うBdk Parfums。本作は金色のラベルに金色のキャップのボトルが特徴的です。このボトルの作品たちは香料の素材に着目した「マティエール コレクション」と呼ばれるシリーズのアイテム。本作は2種類のジャスミンにパチョリやラブダナムなどのウッディな香料の組み合わせが魅惑的。本作のインスピレーション源は雨の森。まるでそよ風に乗ってきた雨が頬を濡らすような、みずみずしさを持った香水です。

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雨季のインドを表現した
Pierre Guillaume|11.1 インディアン ウッド

Pierre Guillaume|11.1 インディアン ウッド

インドの森の中心。偉大なる王マハーラージャの香り。数種のスパイスが雨季の湿気を思わせる暑さと寒さのコントラストに溶け、ミルクの肉欲的な衝動が突き抜ける。ラストは魅惑的なウッディな軌跡を描き切る。

トップ|ペパーミント、カルダモン、レモン(インド産)
ボディ|ナツメグ、ココナッツミルク
ベース|サンダルウッド、モス、ファーバルサム

パフューマー|ピエール・ギョーム

取り扱い店舗|NOSE SHOP 渋谷、麻布台、福岡、オンライン

【コメント】
インドの森の中心にふる雨や暑さ寒さのコントラスト、湿度を表現した作品。トップはミントとカルダモンの爽やかさにナツメグとココナッツミルクのとろりとした甘さやサンダルウッドのしっとりとした香りが加わった、冷たさと暖かでなめらかさも感じる香水です。

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しんとした雨の中を歩いているような
Nebbia|ネビア フィッタ(厚い霧)

Nebbia|ネビア フィッタ(厚い霧)

川沿いの鉄と石が酸素に浸る。何も埃のような存在にはならない。不可能への旅と、湿って錆びた支えへの執着。手で目を覆い、至る所に溢れる静寂に聴き入りなさい。

トップ|湿った地面
ボディ|貴重な森
ベース|アンバー、パチョリ

パフューマー| ー

取り扱い店舗|NOSE SHOP 新宿、渋谷、麻布台、オンライン

【コメント】
鬼才フィリッポ・ソルチネッリが手がけるアトモスフィア・デモーションというコレクションラインの1つ。自身と外との境界が曖昧になることを霧にたとえ、3種類の霧の香水をリリースしています。

フィッタには分厚い霧のイメージが込められています。トップにペトリコールを思い起こす「湿った地面」という香料がクレジットされています。雨上がりのじめっとした空気感にパチョリの土っぽさや森の葉の青さを感じることができます。雨上がりの森を歩いているような感覚になる香りです。

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程よい雨の中のミラノの街中
Nebbia|ピオッジア モデラータ


ミラノの散策。自分の足が道に濡れて感情を引き寄せていることに気づく懐かしさ。孤独な山、失われた世界で感情の音に融合。虚空に降り注ぎ、叫びは物質となり、静寂を破る。水、火、木の恐怖。暗闇で踊る恋人たち。

トップ|ベルガモット、アイリス、マリンノート、マートル、ナツメグ
ボディ|ジャスミン、クローブ、プレシャスウッド、アーシーノート
ベース|ムスク、タイム、トンカマメ、ラブダナム、パチョリ、サンダルウッド

パフューマー| ー

取り扱い店舗|NOSE SHOP 新宿、渋谷、麻布台、オンライン

【コメント】
Nebbiaと同様に鬼才フィリッポ・ソルチネッリが手がけるアトモスフィア・デモーションというコレクションラインの1本。今回の黒い綿があしらわれたのは「雨」をモチーフにした作品群。

モデラータにはミラノを歩きながら、濡れた道に感情を描く自分を見つけたときの郷愁。という意味が込められています。ジャスミンやアイリスの中にマリンノートの雨音とアーシーノートのどっしりとした雨の香りが混じり合った写実的な雨の香りです。

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雨をモチーフにしたミニ香水セットが限定登場!ミニ香水セット 雨の香り

ミニ香水セット 雨の香り

雨上がりの花々の愛らしい香りや、雨の後の地面の匂いを持つ成分「ゲオスミン」を使用した暗闇の森の香りなど、雨にまつわる香水たちがラインアップ!

梅雨をより好きになれそうな作品たちをお楽しみください。
取り扱い店舗|NOSE SHOP オンライン

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おわりに

今回はペトリコールから香水の世界での表現まで、雨にまつわる香りをご紹介しました。この香りたちをまとって雨音を聞きながら読書をしたり、お気に入りのレイングッズと一緒に散歩をしてみてもいいかもしれませんね。ミニ香水キットもぜひお楽しみに!

  • NOSE SHOP(ノーズショップ)
  • ラインアップ(全1種)
  • ミニ香水限定キット 4,400円
  • 取扱店舗|NOSE SHOP オンライン
  • 発売日|2024年6月12日(水)

参考文献
Howard Poynton and Nicholas Rachel,2015,"The smell of rain: how our scientists invented a new word", CSIRO scope,(Retrieved May 24,2020, https://blog.csiro.au/the-smell-of-rain-how-our-scientists-invented-a-new-word/)