連載【私の鼻】クリエイティブ・コンサルタント 市川渚さん 〜 #02 直感で辿る香り 〜

各界で活躍する目利きのプロフェッショナルたちに、フレグランスの選び方、香りが好きな理由を聞く本連載。世界18ヵ国のニッチフレグランスが揃うNOSE SHOPとの接点を探りながら、人と香りの関係性を紐解いていきます。第2回は、ファッションとテクノロジーを両軸に、独自の審美眼に基づくセレクトアイテムや情報を発信している市川渚さんにインタビュー。

連載【私の鼻】第2回 クリエイティブ・コンサルタント 市川渚さん

佇まいと機能性。その両方が美しいモノが好き

― ファッション、テクノロジー、ガジェットからカメラまで、さまざまな分野をブリッジしながら発信している市川さん。ご自身の中で、特に軸となっているカテゴリーやジャンルはありますか?  

どこがメインなのか……考えたことがないかもしれません。興味があるのは、自分の身の回りのすべて。世の中にあるものを見る時に自分のアンテナに引っかかるか否か、それだけな気がします。

連載【私の鼻】第2回 クリエイティブ・コンサルタント 市川渚さん

― 日々情報はどのようにキャッチしていますか?

興味のある範囲はとにかく全般的に逐一、国内問わずチェックしています。SNS、ニュースアプリ、メールなど、収集ルートは皆さんと同じだと思います。

―市川さんがおすすめするモノには、一貫した美意識を感じます。どんなところにアンテナが引っかかるのでしょうか?  

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共通していえるのは、佇まいと機能性の美しさ。設計だけでなく、ルックスも含めて全般的によくデザインされているものに、私は非常に引っかかります。

― ファッションはもちろん、ガジェットも?

アプリケーション、インテリア、家電なども。自分が求めているファンクションと、実際に触ってみた時の体験と、見た目がかっこいいと思うデザインが合致しているものに惹かれますね。

― ピピっと来たら、すぐ入手しますか?

私の場合、めちゃくちゃ調べます。メディアで見かけたり、誰かがおすすめしていて気になったら、じゃあ自分の場合はどうだろうと、まず深掘りをします。ファクトチェックから、その製品が生まれた背景、作っている人たちやスペック、ルックスまで知った上で自分が納得できたら、よし買うぞ!となるかな。

― デジタルライフの空間を心地よく保つためのこだわりはありますか?

インテリアでいうと、ぱっと見は普通の家です(笑)。家電はほとんどスマートスピーカーなどを通して声で操作したり、センサーなどを元にして自動で動くので、周囲からするとエッと驚くくらいスマートホーム化しているかもしれませんが、インテリアがいかにもデジデジしている感じはないと思います。いろんなことが気になる神経質なタイプなので、自分が気に入っていないものはとにかく周りに置きたくなくて。

― 部屋の香りにもこだわっていますか?

はい。香りに感情を左右されることって、すごく大きいから。朝はパッと目が覚める爽やかな柑橘系、疲れた時は森っぽい香りとか。置き型のディフューザーをずっと使っていて、最近はお香も焚くようになりました。あと、エッセンシャルオイルを常備しているので、気分に合わせて垂らしたり。

身にまとう香水は、ひたすら1本だけ

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― 自粛期間を経て、香水の好みが変わったという内容のエッセイを拝読したことがあります。

ここ数年、本当に外に出れない時期があったじゃないですか。とにかく森に行きたくなって、Instagramのストーリーズで「森の香りのするおすすめがあったら教えてください」って聞いたんです。結構いろんな方が教えてくださって、その中から気になった香りのサンプルサイズをいくつかネットで取り寄せてみて、一番ピンと来たのが、NOSE SHOPで扱っているAbel(アベル)の「グリーンシダー」でした。いざ1本買おうと思ったら売り切れていて……と同時に、この香りは私の周りで使っている人が多いことに気づいたので、現品購入はしていません。昔から、香りは人とカブリたくないんです。

― これまでの香り遍歴を教えてください。

いつも一癖あるというか、ちょっと変わった成分が入っていたりするものに惹かれがち。私の好みは明確で、フィグのような果実の香りに、ウッディ、スパイス系が混ざったような複雑な香りがずっと好きです。ただ、コロナ禍の間に、香水が嫌になっちゃった時期があって。自分にとっての香水は、外に出る時にモードをオンにするスイッチみたいな存在なので、使うのはだいたい朝。メイクして、今日も1日が始まるぞというタイミングで、仕上げに香りをまといます。

― 香水の愛用歴はどのくらいですか?

初めて香水を買ったのは17〜18歳かな。若い頃って、自分がなりたい大人の理想像があるじゃないですか。それに合う香りを探して使っていました。その感覚は今でもずっと持っている気がします。

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市川さん愛用の香水。(左から)Cloon Keen スエード ガロア|豊満なスエード(オードパルファム)100ml 30,800円、Abel グリーンシダー(オードパルファム)50ml 23,100円

― 今はどんな香りを愛用していますか?

Cloon Keen(クルーン キーン)の「スエード ガロア」です。1年ほど前、久しぶりに銀座に行った時に立ち寄ったNOSE SHOPで出合いました。コロナ禍で好みが変わったタイミングだったこともあり、お店の方にいろいろお伝えして、選んでもらったものの中でピンときた。

― 店員さんとは、どんな話をしたのですか?

私の香りの好みは基本マニッシュな感じで、これまでフローラル系には近寄ったことがなかったんですけど、もしかすると今なら花もアリかもと思っている、というような話をしました。もうちょっと自分が心地いいと思う香りを選びたい気がしていて。

― といっても「スエード ガロア」はフローラル系ではないですよね?!やはりかっこいい香りだなと感じます。

そうなんです。結局、全然お花じゃない(笑)。癒される香りを求めたはずなのに、私は結局ここなんだなと。「スエード ガロア」は、レザーの香りが入っているところに心を打たれました。私は革という素材が好きなので、それが香りでまとえるというのは面白い。といっても、レザーくさいわけじゃない。新しい発見でした。

― アイルランド発の香りというのも珍しいですね。香水も、ガジェットのようにブランドの背景やスペックなどを事前リサーチしますか?

香りに関しては直感です。なぜなら私は香水をネットで買うことはほとんどないので。お店に行って嗅いでみて、おっ!と思ったものに対して、店員さんの説明を聞けるのであれば聞きますが、それが決め手になるという感じではない。やっぱり香りそのものがどうか、というところが大きいです。いつも変わった香りが置いてあるNOSE SHOPは、ブランドに頼らない買い物ができるところがいい。なんだかんだでコンテクストやブランドネームに引っ張られがちな洋服よりもさらに直感で選べる香水の買い物って、ある意味すごく健全だなと。

― 香水はどんな使い分けをしていますか?

身にまとう香水に関しては、気に入ったものをひたすら使い続けるタイプです。最近だんだん暑くなってきたので、「スエード ガロア」は少し重いかなと思い始めていて。今、気になっているのはRoos & Roos(ロス アンド ロス)の「グロブリュス」という香りです。まだ実際に試せていなかったので、今日楽しみにしてきました。

― ちなみにRoos & Roosはどのように知ったのですか?

NOSE SHOPのInstagramで見かけて、まずシンプルなルックスに惹かれました。それからノートを見て、基本的に嫌いな方向ではなさそうだなと。

― 今年1月に上陸したばかりのブランドですね。実際に試してみて、いかがですか?

あ、好きです!フィグ系?

― フィグは入ってないようですが……トップは、ユーカリの葉と芽のエキス。ボディにカルダモンとミント。香水業界のレジェンドのひとりであるシャンタル・ロスと、その娘でミュージシャンのアレクサンドラが手がけています。この香りのコレクションは100%ヴィーガンです。

私はユーカリ・グロブルスの精油も好きなので、なるほど。でもやっぱりフィグっぽい!これは好きな感じです。パリっぽくて、カジュアルすぎないのがいいですね。

市川渚さんにおすすめの新しい香り
Selected by NOSE SHOP

NOSESHOP_市川渚_ボアアンペリアル

Essential Parfums ボア アンペリアル(オードパルファム)。世界最高の調香師たちによる署名付きの自由な創作。持続可能な栽培方法による天然香料にもこだわりながら、フェアな価格を実現するという反骨精神が光る。広告は打たず、限定的な流通である点も、まさにニッチの最新形態。100ml 15,400円  

― NOSE SHOPから、市川さんへのおすすめはこちらです。Essential Parfums(エッセンシャル パルファン)という、こちらもパリのブランド。

知らないブランドです。あー!春って感じですね。サラッとしたコットンのシャツみたいなイメージ。肌触りが滑らかで、質感がきれいなので、エレガントなお洋服にも合いそうです。

― この「ボア アンペリアル」という香りは、市川さんがお好きなウッディベースでありながら、ネパールペッパーのフルーティなスパイスが効いていて、春夏でもつけられそうな透明感があります。

いい香りです。NOSE SHOPさん、外しませんね。すごい!

― 最後にもうひとつ。NOSE SHOPがプロデュースしているKO-GU(コーグ)です。全33種の香りのラインアップから、市川さんへのオススメは「フォレスト」。

うーん、これはなんだろう、ヒノキ?

― 実はローズがトップノートらしいです。温かみがありますよね。

えー、そうなんですね!不思議な香りです。湯気モクモクのヒノキ風呂に入るような。切りたてのフレッシュな木のような。

― オードパルファムですが、空間、洋服、寝具、髪にもマルチユースできる。

確かに。家にいる間は香水をつけないという話をしましたが、この香りならお部屋にシュッとしても良さそう。しかし、今日のご取材ありがたい仕事ですね、好みの香りを嗅ぎまくれるという(笑)。

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市川さんが手にしているのがKO-GU オードパルファム フォレスト。見た目も名前もミニマルでありながら、古今東西のニッチフレグランスを知り尽くすNOSE SHOPのこだわりが詰まっている。20ml 4,180円  

― こうしてボトルを並べて見るだけで統一感がありますね。市川さんのパーソナルなスタイルが透けて見えるようです。

香りは直感で選ぶと、ボトルも似たようなものが集まってくるんだな。きっとリンクしているんだと思います。

NOSESHOP_市川渚_lineup

市川さんがSNSで見かけて気になっていたというRoos & Roos(中央)は、今年上陸のニューフェイス。気温が高くなるこれからの季節、個性を貫きながら爽やかでいたい時に。Roos & Roos グロブリュス(オードパルファム)100ml 19,800円 


市川渚_profile

PROFILE:
市川 渚(いちかわ なぎさ)/クリエイティブ・コンサルタント ファッションデザインを学んだのち、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。クリエイティブ・コンサルタントとして国内外の企業/ブランド、サービスのコミュニケーション設計、コンテンツ企画・制作・ディレクションに関わる。またクライアントワークの傍ら、自身でのクリエイティブ制作にも注力しており、フォトグラファー、動画クリエイター、コラムニスト、モデルとしての一面も合わせ持つ。丁寧なモノづくりと少し先の未来を垣間見れるデジタルプロダクトが好き。
Instagram:@nagiko
bio.site/nagiko

photo|Shota Yokokura
interview・text|Miwa Goroku

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