映画で語られる香水のお話。

こんにちは!
新宿店の秋間です。
香水はどれもバックストーリーがあったり、使った人にまつわる逸話がある物もありそこを知るのも面白さの一つですよね。

今回は、人物像をより深く印象付けるそんな香水達の逸話の中、映画の中の香水に注目してみたいと思います。

記念すべき第一回目は

「パフューム〜ある人殺しの物語〜」

有名な香水が出てくるわけではないのですが、香水の魅惑的な魅力や、作り方まで見ることができてしまう、私の好きな映画の一つです。
ただし、タイトルにもあるように人が死にますのでそういった少しグロ、ホラー要素が苦手な方はご注意くださいね。

あらすじ

スラム街生まれの主人公ジャン=バティスト・グルヌイユ。
彼は生まれた場所である魚市場の生臭さや革をなめした臭い、木や水、ガラスなど、幼い頃から様々な香りを認識していた。
しかも、良い香りと悪臭とでカテゴライズせず、ただ「その香り」として認識しており後に全ての香りを保存したいと考えるようになる。
生まれた瞬間里子となった彼は、ある日育ての親である革職人に連れられ街へ配達に出かけたところ、今まで嗅いだことのない香りの渦に飲まれ一軒の繁盛している香水店へとたどり着く。
香水という文化があることに感動した彼は、配達先であったもう一軒の寂れた香水店の店主に弟子入りを申し込みます。
そこで店主は彼にライバル店の香水を再現する課題を出すのですが、彼にとってそんなことは朝飯前。
パッと再現するだけに留まらず、「本当はこうした方がいい」と改良までしてみせます。

…さて、ここまでだけだとただのよくある(?)天才のサクセスストーリーなのですが、弟子入りを乞う彼の表情は常軌を逸した必死さ。
実は街に初めて出たこの日、なんとも良い香りを街中で見つけているのです。

ここからはネタバレを含むのでご注意を!

彼の見つけた香りとは…

果物売りの女性の香り。
あまりにも良い香りで、どんどん距離を詰め背後に迫った結果、女性に叫ばれてしまいます。
焦った彼は彼女を殺してしまうのですが、それで終わりではなく、死んでしまった彼女の香りを隅々まで堪能するのです。
ホラーっぽくなってきましたね。
ただ、しばらく香りを楽しんでいたところふとその香りが消えてしまい、絶望した彼はここで「香りを保存したい」と熱望するようになります。

そこからは寂れた香水店に弟子入りを果たし、彼にとって肝心な香りの保存法の伝授と引き換えに新しい香水のレシピを考案しどんどんそのお店を繁盛させていきます。

…さてこの映画、ストーリーが好きなのもあるのですが、映画の中にちょこちょこ香料を抽出する場面が出てきます。

この映画に出てくる香料抽出法について

抽出法については詳しくこちらの記事のインセンスエクストリームについての章に記載しましたので、宜しければ読んでみてくださいね。


寂れた香水店→水蒸気蒸留法
ただ、水蒸気蒸留法は熱が加わる為彼の望む香りの鮮度ではなかった上、自分の抽出したい香りがこの方法では抽出できませんでした。他の保存法は無いのかと寂れた香水店店主に詰め寄ったところ、香水といえばで多くの人が名前を挙げるグラースにある工房を紹介されます。

グラースの工房→冷浸法
グラースの工房では今ではほとんど使われていませんが冷浸法(今では殆ど溶剤抽出法になっています)を用い、チュベローズなど繊細な花の香りを抽出していました。このシーンは私が、沢山の花からこんなにちょっとしか香料が取れないのか!という衝撃を受けたシーンです。

グラースで使われている冷浸法に、これだ!と感じた彼は次に何をするかというと…

果物売りの少女の香りを再現しようとするのです。
花やほかの香料を使って再現してくれればよかったものの、世間や常識を知らない彼はほかの少女を使って再現しようと考えてしまいます。
最初は殺そうとは考えていなかったものの、やはり香りを採取しようとする彼の常軌を逸した面持ちに不安になった少女に叫ばれてしまい、咄嗟にまたも殺人を犯してしまいます。

ただ、その少女から採った香りはあくまでその少女だけの香り。
そこからは
トップ(付けたて〜10分ほど香る香り)、
ミドル(付けてから3時間ほど主に香る香り)、
ラスト(〜7、8時間後まで香る香り)
に用いる香料全てを別々の少女で作ることを目指します。

…ここまでお話しすれば、なんとなく後の流れは予想できてしまうかもしれませんが、衝撃のラストはあなたの目で確かめてみてください…!

この映画を見た個人的な感想

やはり私も良い匂いの人を好きになる傾向がある為この人の香りを保存したい!と思った事は本気度に違いこそあれ何度かあり、少しドキッとしたお話しでした。
鼻が良い悪い関係なく、誰もがフェロモンを持っており遺伝子構造に違いがあればあるほど良い香りに感じるというお話も目にしたことがあるので、私だけでなく思い当たるところがある方は多いんじゃ無いかな?とも思います。
主人公には体臭がない=誰の最高にもなれない。
ラストの民衆の狂宴でも、最初は香水を纏った主人公への賛美であったものの次第に香水のついたハンカチに興味が移り、その後にはその香りで満たされた空間に酔いしれ、主人公は目に映らない存在になってしまったようでした。
彼は天使の香りを完成させるには至ったものの、やはり彼にとっての最高は果物売りの少女の香りで、それはどうやってももう手に入らない上、誰かに必要とされたかった虚しさを感じるラストでした。
実際には体臭が無い人はおそらく存在しないのではと思うので、香水をつけても唯一無二の香りを大切にしたいですね。

皆様も、もしこの映画をご覧になったら感想を是非教えてくださいね!
秋間でした!