香料シリーズ【バニラ】の回

こんにちは、浦野です。
お馴染みの香料シリーズ(香水に使われている香料を軸として、香水に魅力をお届けしています)ですが、冬と言えば甘い香り!
甘いの香りと言えば!!バ ♡ ニ ♡ ラ ♡…と言うことで!
今回の香料斬りは【バニラ】いってみましょう!

バニラの香りの正体は?

お菓子に欠かせない香り=「バニラの香り」と言ってもいいほどで、アイスクリーム、プリン、洋菓子全般まで幅広く使われます。嗅いだことナイなんて人いないですよね!
バニラはラン科の植物で、香料になるのは「花」ではなく「実」の部分。残念ながらバニラの花の寿命は1日と、とても短く実を着けるまで3~4年かかります。花言葉の「永久不滅」は花の命の短さと記憶に残る香りのギャップから由来します。
バニラの花が結実して熟すと15~20cmの実(インゲン豆のような形状)を付けます。この実はそのままでは香りません。
この実(種子)を収穫し発酵と乾燥を繰り返し、その後、水蒸気もしくは溶剤で抽出することより初めて独特の甘い香りがする「バニラビーンズ=バニラ香料」となります。

この「バニラ香料」の香りの主要成分の物質を「バニリン」と言い「バニリン」自体を人工的に作り出すこと(合成バニリン)も可能なので、大量生産される安価なお菓子などには「合成バニリン」が使われることがほとんどです。
バニラビーンズから抽出される「天然バニリン」は「合成バニリン」では味わえない、独特な香りで芳香自体に価値もあり、抽出するのも非常に手間のかかるために価値も高いです。(天然バニラは、サフランに次ぐ世界で2番目に高価なスパイスと言われています)

香水として「バニリン」を使用したのは、1889年にGUERLAIN(ゲラン)より発売された「Jicky(ジッキー)」が最初とされています。それ以来オリエンタル調の香水には欠かせない素材の1つとされています。

バニラの香料を知ったところで、さっそくバニラの香りがする香水をご紹介しましょう。

Maya Njie|ヴァニル

ロンドンのアトリエでマイヤ自身がハンドメイドで制作しているマイヤ・エンジャイの香水たち。彼女は西アフリカをルーツに持ち、スウェーデンに生まれ、十代後半にロンドンへ移住している。彼女の生まれ故郷、スウェーデンのお菓子作りに欠かせないカルダモン。

スウェーデン発祥のセムラ(semla)はスウェーデンで生まれたお菓子で、簡単に言うと北欧のクリームパン。カルダモン入りの丸パンにバニラとアーモンドのホイップを挟む。どっしりしていそうなクリームからは想像もつかない軽い香り立ち。。そう、まさにこの香水は、スウェーデンの家庭的な優しい甘い香り。甘いバニラの中にカルダモンがよく効いている。結婚式にだって欠かせない、スウェーデンの伝統的な甘い香り。
幸せな香りをどうぞ召し上がれ。

NOTE:
バニラ、カルダモン、パチョリ、ムスク、シダーウッド、アンバー

CRA-YON|ヴァ二ラシーイーオー 世界征服

NOSE SHOPの取り扱いが残念ながら終了してしまったフレグランスブランド『AGONIST』ですが、AGONISTを手がける夫婦が新たに立ち上げたのが『CRA-YON』です。とてもPOPなネーミングにビジュアルもチャーミング!もちろん、香りもとてもユニークでハイクラス!その中でもこの『バニラシーイーオー』は“世界征服”という面白い副題。(なんかキュンキュンしますね!)
トップノートとミドルノートに使われている“バニラオーキッド”とは(午前中にわずか1、2輪のみ花を咲かせる貴重なバニラ)はクリーミーでぬくもりのある香り。アンバーが重なってさらに濃厚に香りつつ、ウッドがアクセントを付けて香ります。グルマン系のバニラではなく、あたたかく包み込むようなバニラの香り。
リラックスできそうな香りで世界征服どころではなくなってしまいそう(笑)

トップ|マンダリン、バニラオーキッド、アンバー
ボディ|バニラオーキッド
ベース|アンバー、ウッド

Perris Monte Carlo|ヴァニーユドゥタヒチ(タヒチのバニラ)

モナコのブランドPerris Monte Carloから入荷したばかりの新作がこちらのバニラの香水。こちらは『超臨界CO2抽出(超臨界二酸化炭素抽出)』という抽出方法を用いたバニラの香り。
簡単に説明すると、コーヒーのデカフェ(カフェインをほとんど取り除いてあるコーヒー)を作る時と同じやり方を用いています。有機溶剤を使う抽出方法はアブソリュート中の溶剤の残存をゼロには出来ないけれど、このやり方を用いるとより純度の高い香料が採れるというわけ。

二酸化炭素(CO2)は、固体から液体を経ずに気体になる物質ですが、圧力をかけることによって“超臨界流体”という液状になります。(なんか名前かっこいい)それを使い、原料植物(この場合バニラ)と二酸化炭素(CO2)をタンクに入れ圧をかけ、超臨界流体の二酸化炭素に香りを溶かします。二酸化炭素を元の気圧にもどせば(二酸化炭素自体は気体に戻り)エキストラクトと呼ばれる有機化合物がとれるそう。これを香料に使います。

なんとなく抽出方法ばかりに気を取られてますが…
肝心の香りは、3つご紹介した中で最も大人な雰囲気のバニラです。香りに奥行があり、バニラの種子の甘い部分だけでなくバニラの花、フローラルな部分も表現されてます。

トップはイランイランの妖艶なフローラルの甘さ、そしてチャンパカの花のエキゾチックな甘さが気高く香り立ちます。そして、そこに世界最高級と言われるのタヒチ産のバニラを超臨界二酸化炭素抽出で取り出した最高級のバニラの香りが重なります。(タヒチ産のバニラは世界で流通しているバニラの1%ほどだそうです)
ラストはミルキーなサンダルウッドと甘いアンバー、ムスクがさらに重なり深みが増していきます。
透明感、空気感をはらんだ甘いだけじゃない妖艶なバニラの香りになっています。

NOSE SHOPの香水の中でも超臨界二酸化炭素抽出を用いて作られている香水はそんなに多くはありません。NOSE SHOPファンの皆さん、バニラ好きの皆さんには1度は試してみて頂きたい香りです!

NOTE:
トップ|イランイランアブソリュート、チャンパカアブソリュート
ボディ|タヒチ産バニラ(超臨界CO2抽出)
ベース|アンバー、サンダルウッド、ムスク

私が今回紹介したのは最近取り扱いがスタートしたばかりの香りでしたが、以前のNOSE SHOPマガジンにもバニラを特集した記事も合わせて読んでみても面白いですよ。
どのバニラの香りがお好みに合うか教えてくださいね。