フゼア系ってどんな香り?

日々増える香りの世界。一体このジャンルどんなやつ?という疑問が出ることもしばしば。
自分でも普段店頭に立っていてピンとこないな…と思うことも。そんな悩みについて自分なりに調べた結果をご紹介しようと思います!

個人的に二大ピンとこないジャンル、シプレとフゼアのうち、今回はフゼア系の香り特集です!

フゼア系って一体何?

フゼア系って言われてもレザーとかシトラスとかフローラルみたいにわかりやすい言葉じゃなくて何を想像したらいいか全然ピンときませんよね。
フゼア系の語源はシダのフランス語Fougere(フゼア)からきています。
実はこれ自然界にあるシダの香りではなく、香水が発展していく上で生まれたヒット香水を原型にその構成をなぞった場合に使われるジャンルの名前でした。

その香水は18世紀に誕生した世界最古とも言われる香水ブランド、Houbigant(ウビガン)のFougere Loyal(フジェール・ロワイヤル)というもの。

余談ですが、ノーズショップで扱っているぺリスモンテカルロは元々、ペリス家一族で香水事業を行っており、ウビガンは彼らが手掛けるブランドの一つ。
低迷期にライセンスを買い取り、人気を取り戻させたというバックグラウンドがあります。
その事業で得たノウハウなどを活かして生まれたのがペリスモンテカルロというブランドです。

話がそれてしまいましたが、そのフジェールロワイヤルとは香りのないシダ植物に香りを与えた作品です。

その香りの構成を現在のフジェールロワイヤルから引用してみましょう。(日本未上陸でノーズショップでの扱いはありません)

Houbigant(ウビガン)|Fougere Royal(フジェール ロワイヤル)

ヘッド:ベルガモット、地中海のハーブ、ラベンダー、カモミール
ミドル:ロンデレティア(ベニマツリアコード)、ゼラニウム、メイローズ、シナモン、クローブ
ラスト:アンバー、オークモス、クマリン、パチョリ、トンカビーン、クラリセージ
(ウビガン、英語ホームページ[https://www.houbigant-parfum.com/eu_en/fougere-royale.html]より)

この香水でメインになっているのがラベンダー、オークモス、クマリン。
このクマリンを単体で、そして合成香料というものを初めて香水に使用したのがこのフジェールロワイヤルでした。
クマリンとは合成香料で、桜餅を作る過程で、桜の葉を塩漬けしたときに発生する物質。
あの桜餅らしさを生み出す香りをもつ物質(香気成分)で、他にはトンカビーンにも多く含まれます。
トンカビーンについては下記記事もあわせて読んでみてください!


このフゼアの香りについて嗅覚を研究する学者ルカトゥリン氏は著書『世界香水ガイド』にてラベンダーとパチョリの間の香りと発言しています。
ラベンダーのお花にクマリンやパチョリの穏やかな香りの変化やその3つが揃うこの型をフゼアと呼ぶようです。

フゼア系はラベンダーとオークモスのかっちりとしたイメージに、だんだんと甘くて粉っぽいトンカビーンが出てきて複雑な印象なのに石鹸のような清潔感がある、The香水な雰囲気です。
初めて私がフゼア系の香りを試した際の感想は「ブラウン管のテレビの中に出てくるスーツをビシッと着たサラリーマンから漂いそうな香り」でした。ですが、ノーズショップでの既存の枠に当てはまらないフゼアの香りを試すうちにだんだんと正統派な香りに面白みを感じるように。
それでは、具体的にどんな香りがあるのかノーズショップのアイテムを例にみていきたいと思います。

フゼア系って具体的にどんなアイテムがあるの?

フゼアは最近のヒット香水が入っていることもしばしば。代表的なものではシャネルの『アンテウス』、『エゴイスト・プラチナム』ゲランの『ジッキー』、ジャンポールゴルチエの『ル・マル』もフゼアの香り。
この例を見てピンとくる方も多いと思いますが、歴史的にはメンズ向けの香りのテーマとして扱われることが多い香りです。
しかし、男性だけのジャンルかと言われたらそうでもなく、フゼアの代表的な作品の一つであるゲランのジッキーは世界初のユニセックス香水として発売されたように、フゼアは性別問わず使っていただけるジャンル。
それではノーズショップで扱いのある香りの中では、どんなものがあるのでしょうか。

モダンで普遍的なフゼア
NISHANE(ニシャネ)|B-612(ビーロクイチニ)

NOTE:
トップ|ラベンダー、ゼラニウム、サイプレス
ボディ|カシュメランウッド、シダーウッド、サンダルウッド、パチョリ
ベース|ムスク、オークモス、トンカマメ

今年登場のニシャネの星の王子様シリーズから青いボトルのB-612。今一番人気のあるフゼアはこれでしょうか。
吹き付けた瞬間ラベンダー、シダーウッドとカシュメランというウッディムスクの香りが広がってかっこいいです。
トップのラベンダーとゼラニウムから、ベースのオークモス、トンカビーンまでどこまでもフジェールロワイヤルの構成に寄り添ったような香り。
ですが、試してみるとクラシックな要素がなくスパイスとシトラスが入っていないせいかミニマルでドライな香りに。
フゼアに苦手意識を持っている方に一度は試していただきたい正統派でモダンなフゼアです。

全てのフゼア香りの中でもおさえておきたい
Nicolai(ニコライ)|ニューヨーク

NOTE:
トップ|プチグレイン・レモン、ベルガモット、レモン、タイム、ニガヨモギ
ボディ|ブラックペッパー、クローブ、シナモン、ラベンダー、カモミール
ベース|オークモス、バニラ、スティラックス、インセンスレジノイド、ムスク、シベット、カストリウム

ゲランの血を引くフランスの老舗ブランド、ニコライからNew York。
ブランドの発足と同時の1989年に発売されて以来のベストセラーで、実はヨーロッパではニコライといえばこの香りという存在です。

出したてからスッキリプチグレンとレモンがパッと明るく出ますが徐々に大人なラベンダーにカモミールの落ち着いた雰囲気、ベースのバニラのほのかな甘さにパウダリーなシナモンが重なって試せば試すほどクセになります。
一見すると昔の男の人のような香りですが、注意深く試してみると繊細で綺麗な香りです。

この香りについて、辛口香水批評でおなじみのルカトゥリンさんはご自身の著書、『世界香水ガイド2』にて満点の星5の評価をしました。
また彼の香水トップ10リストでは、女性向け男性香水と男性用香水のオススメトップ10にランクインしています。
彼は5つ星と共にこんなコメントを残しています。

この香水の洗練されたバランスは、心地よく安定しており、それでいて決して崩れない。存在感はあるものの、決してうるさくならない。これまでで最高と言える男性らしい香りの一つである。
もし自分の家が火事になったら、私はこれを持って逃げるだろう。読者の皆様、私は10年間つけていた。
『世界香水ガイド2 1885』より。(芳山むつみ,Luca Turin and Tania Sanchez, 2010, 原書房.)

まさに普遍のクラシック。数あるフゼアの香りの中でも欠かせない香りの一つです。

実はこれもフゼアの香り
D.S and Durga(D.S アンド ダーガ)|バーニング バーバーショップ

NOTE:
トップ|スペアミント、ライム、ヘムロックス プルース
ボディ|ラベンダーアブソリュート、トルコローズ
ベース|バーントオイル、バニラ、ヘイ

理髪店の火事を再現したことで話題のこの香水。アメリカではベストセラーの香りです。
構成をよくみると、ライム、ラベンダーにバニラ...実はこの香りもフゼアなんです!

全体的にベースのバーントオイルの焦げたような香りと重く甘いバニラの香りが包んでいますが、しっかりと理髪店のポマードのような香りもします。
人によりけりですが、昔の整髪料っぽいとおっしゃる方も多いフゼアの香り。
このポマードっぽさをラベンダーとライムとクマリンの代わりにバニラを使ったフゼア調の香りで表現しているのではないでしょうか。
フゼアの表現の幅の広さにびっくりしたのと同時に海外でベストセラーになるのもなんだかわかる気がしました。

今回はちょっと難しいフゼアについてをご紹介しました。
抑えておきたいポイントは「ラベンダー+甘い香り」。
フゼアはキリッとしたスーツにあわせてみたい香りでした。
星の王子さまの惑星から焼けた理髪店まで表現の幅が広く奥深いものでした。
みなさんも奥深いフゼアの世界を探検してみては?

参考書籍
芳山むつみ,Luca Turin and Tania Sanchez, 2010, 『世界香水ガイド2 1885』原書房.
Luca Turin, 2008, THE SECRET SCENT:Adventure in Perfume and the Science of Smell.(山下篤子,Luca Turin, 2008, 『香りの愉しみ、匂いの秘密』河出書房.)

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