NATURAL VS. SYNTHETIC

By Juliette Faliu

香水は本当に恐るべきものなのか

ジュリエット・ファリウ

透明性を求める消費者たちの声に対し、業界団体はほとんど反応しない。このような態度はより健康的で安全だとされる天然製品の魅力を逆説的に高める結果となっている。だが果たして本当にそうなのだろうか。つまり化粧品に対し使用される合成成分は、本当に天然成分より高いリスクをともなうものなのだろうか。現代において安心して香水を使うことはできるのだろうか。

「リスクゼロ」を目指すことは、香水を始めとした化粧品業界全体に課せられた使命である。化粧品の作用があくまで皮膚の上にのみ及ぶものである限り、特段命に関わるものでないように思われる。そのため化粧品はその利用者に利益だけをもたらすのであろうとそう見なされてきたわけだが、しかし今日において消費者たちは業界大手に不審のまなざしを向け、より健康的でより自然な選択肢のほうへ注目し始める人々が増加している。コスメビオ協会のアンケートによれば、オーガニックないし自然化粧品の消費者の3分の2が初回の購入に際し、環境意識や健康上の問題、あるいはその健康に対し化粧品が与える影響への懸念といったものが決め手となったと答えている。そして調査対象となった41%がこの種の製品を使用し安心感を得ていると回答しているという。オーガニック香水やエッセンシャルオイルの需要が高まるなかで、2017年にはこれらの売上げが約20%増加した。一方で、化粧品業界はここ15年のあいだ、使用された合成分子がらみで何件かのスキャンダルに起こしている。その背景には人間の手によって作られた素材と、自然界に始めから存在していたものとの対立関係に起因するある種の恐怖心が透けて見える気がする。とはいえ自然であることが無害であることを即座に保証するものではないということもまた、ずっと前から知られていることであるはずだ。1937年には早くも、鎮痛作用の薬効がある植物、ウィンターグリーンの精油による中毒事故が6件報告されている。すべて成人で、うち3名が死亡。その3名はそれぞれ15ml、30ml、80mlの精油を経口摂取していた。そして当時24歳だったアメリカ人女性エミ
リー・スミスは2017年11月、ディフューザーから噴霧された精油の原液を誤って浴び、顔に深刻な火傷を負った。つまりこれらの事案から言えることは、こと健康衛生面に限っては(つまり環境に対する配慮などは除いてということだが)天然であるか合成であるかという対立関係は、科学的視点から見てもほとんど意味をなしていないということなのだ。「合成分子の利点は、対象となる成分の構造を(すなわちその分子を構成する原子の空間配置を)正確に把握できることです。それによってアレルギー反応を起こすリスク(感作性ポテンシャル)を明らかにすることができます。一方で天然抽出物はこれよりはるかに複雑です。300以上もの分子を含むとも言われ、そのなかには未知のものさえあるのです」、化粧品産業における規制管理業務を担当するマリー・ドランジェはそのように語る。香水に対する消費者たちの懸念は2000年ごろからじょじょに高まり始め、やがて食品産業に対するそれと同じような動きをたどっていくことになった。「自分が肌に何を塗って、何を環境のなかに排出しているのかが心配になってきたのです」、マリー・ドランジェはそう言葉を継ぐ。

毒性リスクについて

どのような香水も分子から構成されている。それが天然由来であれ合成プロセスを経たものであれ、あるいは自然界に存在するものであれ人間によって開発されたものであれ、みな例外なく。そして生体にとって異物である物質には例外なく毒物としてのリスクがある。その毒性の影響は治療可能な場合もあれば不可能な場合もあり、ときには死を引き起こすこともある。香水の一部成分はアレルゲンであり、その他の成分には発がん性(Carcinogenicity)、遺伝物質に変異を引き起こす因子(Mutagenicity「変異原性」)、生殖毒性(Reproductive toxicity)に分類されるものがあり(これら3つの頭文字を取りCMRと総称される)、そしてなかには内分泌かく乱を起こす可能性を持った因子もある。接触アレルギーで相談に訪れる8%から15%が香水に対しアレルギー反応を起こす兆候を見せたと見積もられているが、実際のところ正確な有病率はいまだ明らかにされていない。現在欧州規制のリストに記載されている26のアレルゲンのほとんどが自然抽出物に含まれる分子であるということも注目に値するだろう。マンダリンオレンジの精油の主成分であるリモネンもこのリストのなかに入っている。CMR分子はすでにそのほとんどが禁止されているものの、無害な濃度に希釈することで許容されているものもある。ローズオキシドがその例だ。バラの抽出物のなかにもともと存在している分子だが、その含有量は危険をともなう割合ではない。つまりこうした物質やアレルギー問題に関しては、「量が毒を作る」というパラケルススの格言が示している通りなのである。有名なのは青酸カリなどの原料となるシアン化物であるが、これが完全に天然のものであった場合、例えば体重60kgの人にとって0.48gからが致死量となる。したがって、それ以上だと悪影響が引き起こされるという閾値を明確にすることが争点となってくるわけだ。その閾値に加え、個人間の感覚の差異や一日のなかで偶発的に摂取してしまう(曝露)量の最大値を考慮した安全マージンを設定することで、認可レベルの上限を導き出すことができるのだ。バラに含まれるもうひとつの分子、メチルオイゲノールは製品カテゴリーによって0.0002%から0.01%とその含有量にはばらつきがある。内分泌かく乱物質は天然素材だけではなく合成素材にも同様に含まれ得るが、その危険性が認知され始めたのは比較的最近のことである。欧州当局がこれらの物質をめぐる定義を採択したのもようやく2017年12月になってからのことだった。決して軽視されているわけではないものの、化粧品におけるこれらの物質のリスクはいまだ正確に見積もられていないというのが現状だ。というのもこの内分泌かく乱物質に限っては、毒物学における基本的アプローチ方法である「用量と効果」の関係則が通用しない場合があるからである。ごく少量偶発的に摂取しただけでも、多量に摂取するより深刻な結果をもたらす可能性もある。クラランス・グループ研究開発部門元責任者のリオネル・ド・ベネッティによれば、「現行する科学的知識に基づいて申し上げるとすれば、認可されているすべての物質は通常の用法用量で使用されている限り、あらゆるリスクを免れていると言えます」とのことである。とはいえ消費者にとってはこうしたどこか要領を得ない、歯切れの悪さも懸念材料となっているのだろう。

欧州規制リストに記載されている26のアレルゲンのほとんどが、例えばリモネンのように、天然素材からの抽出物に含まれる分子なのである。

フタル酸と合成ムスク

こうした疑惑は消費者団体やNGOが公表した報告書によっても高まることとなった。なかでも有名なのはグリーンピースが2005年に発表した調査書「香水におけるスキャンダル」であろう。この調査ではさまざまな香水のなかに含まれるフタル酸エステルや合成ムスクの含有量が測定された。さらなる懸念を呼んだのは、事実としてこれらの化合物が血液や母乳から検出されているということだ。しかしある液体内にある物質が存在するからと言って、その物質に毒性があるということを即座に示すわけでもない。したがってフタル酸類などある分子群をひとくくりにして非難するのは誇張的だと言わざるを得ない。例えば一部原料の溶媒として使用され、アルコールの変性剤としても使用される(コラム
「香水瓶のなかには何が入っているのか」を参照のこと)フタル酸ジエチル(DEP: Diethylphthalate)がグリーンピースによる調査内で槍玉にあげられた。しかし繰り返し安全性評価が行われた末、いかなる危険性も見出すことができなかったと消費者安全科学委員会(SCCS:Scientific Committee on Consumer Safety)が明らかにした。この委員会は科学的問題について欧州委員会に勧告する専門機関である。一方で、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP: Diethylhexyl phthalete)は確かに内分泌かく乱物質であると特定され、化粧品への使用が禁止された。次にガラキソリドに関してだが、この分子は衛生製品や香水にも頻用される人工ムスクの一種であり、同じくグリーンピースによる調査対象となっていた。先の消費者安全科学委員会を含む、欧州連合に属する複数の科学機関により2002年、2003年、2007年と検査が実施され、その結果、人体や環境に対し目立ったリスクは
見出されないと結論された。そしてこの結論は2014年、合衆国の環境保護庁によっても確認されたのだった。ところが一転して欧州化学機関(ECHA: European Chemicals Agency)により水生生物に対し大変な毒性があると判定されると、その結果、機能性香料(洗剤や柔軟剤など)にガラキソリドを多用していた調合会社大手各社は以降代替品を使用するようになったのであった。高級フレグランスには依然としてこのガラキソリドが使われ続けているものの、その使用量は微々たるもので、環境への排出に関してもその影響は無視してさしつかえないものである。

透明性の要求

香水業界の関係者たちは香水作りにおける多くの利点から合成を擁護する努力を惜しまないが、しかしながら化学という分野が一般においてはごく狭い層にしか理解されておらず、そのため今のところは不安感を与える側面だけが強調されてしまっているというのが現状であろう。「なので自然製品に関してはわれわれも透明性を求める声に対応することができますが、残念ながら現時点では、合成物は不透明なままなのです」と、自然化粧品を専門とする独立コンサルタント、ミュリエル・フォルマール=カーンは解説する。多くの人々にとっては「シャマエメルム・ノビーレ」という言葉を読むときのほうが(ローマカモミールの学名、ラテン語名だ)、「1-メチル-4-プロップ-1-エン-2-イル-シクロヘキセン」(柑橘系植物に含まれるリモネンの化学名)と記載されているのを目にするよりも安心できることだろう。一方で、現代の社会の方向性を決めるにあたり強い影響力を有しているミレニアル世代は、今や透明性は企業と顧客との信頼関係を築くにあたり非常に重要なものとなっているととらえている。プロクター・アンド・ギャンブルは化粧
品に含まれる香料成分の詳細を、その成分が0.01%を超える場合に公開する体制を2019年までに整えると発表した。しかしこのような取り組みに続こうとする企業は今はまだ少ない。香水にはコピーから保護するための法的手段がほとんどなく、その数少ない手段である企業秘密の理念と正面から衝突してしまうからだ。

さらに多くの業界関係者たちがそろって、化粧品および香水業界はコミュニケーションの面で問題があると指摘している。「誰もが発言を恐れており、反応までの時間が非常に遅いのです。発表が行われるころにはもうすでに、何か悪いことが起こっているということがしょっちゅうです」とリオネル・ド・ベネッティが状況を要約する。フタル酸類のケースがそのいい例だろう。問題を引き起こす可能性のあったフタル酸系分子のうち、その多くは香水ではなくプラスチックの製造に使われていた。にもかかわらずこの点について一般の人々に届くような発表は何ひとつ行われず、結果としてこの主題をめぐって世間に流布している誤解を払拭することができなかったのであった。香水業界特有のこのような内気な性格は、関係者たちの意欲や真剣さに対して向けられる疑惑を知らず知らずのうちに助長してしまっているのではないか。このような現状はこの業界に対し正当な評価を与えるものではあるまい。何せ香水業界は40年もの長きにわたり製造方法と自己管理方法を絶えず革新し続けてきたのだから。しかしながら、これは驚くべきことであるが、1970年代ごろまで化粧品の製造および使用に関して規制と呼べるような規制はほとんど存在しなかった。「当時は誰もが何を作ってもよく、どんな製品を使おうが自由でした。ですがもちろん、それは普通のことではありません」、そうリオネル・ド・ベネッティは留意する。当時は化粧品が皮膚というバリアを透過するものだとは考えられていなかったのである。フランスでは1972年、赤ちゃん用ベビーパウダー「タルク・モランジュ」に起因するスキャンダラスな衛生事故が発生し、当該製品に含まれるヘキサクロロフェン(殺菌剤)による事故汚染で36名の赤ちゃんが死亡したことを受け、ようやく当局が動き出したのだった。

香水瓶のなかには何が入っているのか

香水は主としてアルコール度数96%の変性エタノール、濃縮香料、そして少量の水から構成されている。そこに1種類ないしそれ以上の紫外線吸収剤や着色料が加わる場合もある。
エタノールは香水の希釈剤としてだけではなく防腐剤としても機能し、高濃度のアルコールによって細菌の発生を防ぐ役割を果たす。さらには香りを拡散しやすくする面もある。アルコールは誤飲を避けるため、使用前にメーカーによって変性され苦味が加えられる。その変性剤としては、フタル酸ジエチル、デナトニウムベンゾエイト、サリチル酸メチルなどが挙げられる。濃縮香料は調香師の求める比率に応じて、精油、アブソリュート、その他の(二酸化炭素抽出による)抽出物、あるいは(自然に存在するものと同じものを作り出した、ないし完全に人工的な)合成分子などが用いられる。水は79%というアルコール度数を保証するために用いられる。それが許可された最大値なのだ。また水には香水が塗布された際蒸発しにくくする役割もある。紫外線吸収剤は、香水が光に晒されても変色しないようにするために頻繁に添加されている。そして着色料だが、望んだ色を香水に与えるために使われることがある。そしてこれが使われる場合は、必ず紫外線吸収剤もセットで添加される。

自主規制機関の誕生

化粧品業界のなかでも、香水業界が最も公衆衛生の問題に対し積極的な姿勢を見せていると言えるだろう。1973年には国際香料協会(IFRA: International Fragrance Association)が設立され、ある種の専門的自主規制機関であるこの協会は、その下部組織として独自の科学評価委員会、香料素材研究所(RIFM: Research Institute for Fragrance Material)を有している。この協会には香水産業に従事するほぼすべての企業が加盟しており、香りの分子の使用に関する推奨事項が定期的に協会から発表されている。それがIFRA基準である。さらに協会は一部の化合物に関し、欧州連合による化粧品規制よりも厳しい制限を加盟企業に課している。事実その歴史全体を通じて、香水業界は自らの利益を守るには非難される可能性のあるありとあらゆるリスクを事前に排除しておくのが最善の策だと信じてきた。「とはいえ食品業界や農薬業界ほどには、香水業界はロビー活動においての力を発揮してはおりません」とマリー・ドランジェは指摘する。2016年におけるフランス国内での売上高が90億ユーロに達した化粧品業界および香水業界の数字は決して無視できるものではないものの、同期間における食品業界の売上高1,720億ユーロとは比べるべくもない。ヨーロッパの規制が大きく変わったのは比較的最近のことである。2006年12月、欧州議会および欧州理事会はREACH規則(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals「化学品の登録、評価、認可、および制限」)を採択し、その規則における技術面、行政面の管理を担う組織として欧州化学機関(ECHA)を設立したのだった。市場に出回っている化合物の無害性を証明することに加え、製造各社はすでに流通しているあらゆる製品の安全性を再評価する必要に迫られた。2009年になると化粧品規則No.1223/2009が採択され、その施行は欧州委員会にゆだねられた。この条項は、禁止された分子、使用に特別な許可が必要な分子、反対に、特定の状況において使用する義務がある分子(いわゆる「ポジティブリスト」である)を中心に定めたものである。このうち3つ目の分子のリストに関しては、フレグランスに添加される着色料や紫外線防止剤といったものがこれに含まれ、製造各社は認可されたもののなかから使用する成分を選ばなければならなかった。さらにこの化粧品規則No.1223/2009は動物実験の禁止も定めていた。2013年に実効へといたったこの条項は業界が今も適応に苦心している大きな変化であると言えた。「皮膚への影響に関しては現在、対象の分子がアレルギーを引き起こすか否かということについてじゅうぶん正確な予測が立てられるようになっています。したがって問題を引き起こすリスクのある分子が開発されることはありません」、そうマリー・ドランジェは保証する。しかしながら全身毒性(効果範囲が全身におよぶ毒性)に関しては、動物というモデルに頼ることができなくなったため、新たに開発される成分の評価は以前より正確なものではなくなった。

オーガニック香水のレシピとは

香水がオーガニックであることを定義するラベルは複数存在する。そのそれぞれにおいて天然成分の最小割合や禁止物質のリストが異なっている。最もよく知られたラベルは「コスメティック・ビオ/コスメビオ憲章」であるが、このラベルを付された香水は下記の条件を満たした調合である必要がある。
・成分の少なくとも95%が天然もしくは天然由来であること(バイオテクノロジーなどの、「天然」扱いとなるプロセスから得られた分子、そして自然界に存在するものと同一の分子もこれに含まれる)。
・植物性原料の95%がオーガニック認定を受けていること。
・最終的な製品原料の少なくとも95%がオーガニック認定を受けていること。
「コスメビオ」製品にはアブソリュートを使うことはできない。製法上、石油由来の溶剤が含まれてくるためだ(他のラベルの製品には許容される)。しかし石油化学成分の使用が特定の状況下で推奨されるリスト(ポジティブリスト)があり、そのリストのなかからなら、有機化学から得られた分子の使用が(最大で5%)認められる。
完成した香水の主成分であるアルコールは植物由来かつ有機農業由来でなければならず、オーガニック成分を10%以上含むという基準を遵守している必要がある。一般的には小麦由来のアルコールが使用される。したがって香水がオーガニックであるということは、必ずし100%天然であることを意味するわけではない。たいていの場合、ラベルは石油由来の製品や論争の的となる分子の使用を制限する調合ルールを含意している。

無数の評価書類

かくして、規制は起こった問題に対処するためのものから問題そのものを予防するためのものへと変化していったのであった。そしてその目的は消費者の健康はもちろんのこと、環境問題をめぐるさまざまな課題を統合するということを主眼としていた。「今日、ヨーロッパにおける化粧品規制は世界で最も厳しいものであると同時に、最も効果的に予防しているものとして目されています」とマリー・ドランジェは述べる。そしてその見解は業界でも広く共有されているようだ。「香料の調合を決める際、サプライヤーは無数の書類を提出するよう求められます。アレルゲンリスト、(場合によっては)CMR物質リスト、さらには欧州規制適合証明書、あるいは光感作物質が含まれていないかどうか、IFRA基準に準拠しているかなどといったことを示す書類」といったものを列挙しつつ、リオネル・ド・ベネッティは次のように続ける。「たとえこれらすべてのチェックが済んだとしても、それでもすべてが完全に『安全』だと言える保証はないのです!」事実上記のごとく、消費者の安全を確保するために製造各社は評価書類を当局に提出することが義務づけられている。各成分中の毒性をプロファイル分析することによって、化粧品や香水の安全性は評価される。この分析は独立したラボにおいて、次の4つの段階に分けて実施される。すなわち、危険性の特定。反応を引き起こす用量の評価(実際に試験が行われるのはこの段階からだ)。曝露に関する評価(使用される頻度や塗布面積、成分が洗い流されるか否かなど)。そして最後は、想定されるリスクの特徴づけである。この分析の結論は、しかじかの物質においてリスクとなり得るのは「1日あたり、体重1kgあたり、何mg」といったような量的、質的表現の形を取ったフォーマットによってデータ化されまとめられる。

試験をめぐる論争

法令はこのリスクの特徴づけの結果に依拠して整備されるため必然的に、その特徴づけを導くうえでの試験に対し論争が集中することになる。ラボによって採用された1日における最大曝露量と頻度の基準が不十分であると批判されることもあった。フランス消費者協会「ク・ショワジール(何を選ぶか)」におけるデータベース内で「化粧品内にあるものとして望ましくない成分」として最近挙げられた分子のなかに、オクチルメトキシシンナメートの名があった。香水には紫外線防止剤として用いられている物質である。同協会はこの成分を無視できない危険をともなうものとして記載していたが、2012年フランス国家医薬品安全庁(ANSM: Agence nationale de sécurité du médicament et des produits de santé)による見解では一転して、「想定可能な条件で使用される限りにおいて、消費者の健康に危険をおよぼすものではないと思われる」という好意的な判断がくだされた。リオネル・ド・ベネッティによれば、こうした食いちがいは協会や組織間において採用されるメソッドのちがいに起因しているという。「普通では考えられない使用状況を想定して実施される試験も多く、そうやって不当に恐怖心を煽っているのです。用量、使用頻度、検査対象素材といった項目すべてにおいて疑義を挟む余地が多分にあります」。
化粧品はフランスでは特に盛んな分野であり、業界としては世界一の市場を持っている。人の内に眠る私的な部分と幸福感とに密接に関わる分野だけに、他のどの分野よりも消費者からの信頼に大きく依存することになる。だからこそ頻繁に非難や批判の対象となるのであろう。議論が活発に行われ、消費者たちが意識的に選択できるようになることがもちろん重要なのであろうが、しかしこうした理想はこのセンセーショナルな報道がウィルスのように広がる時代にあっては、ただそのような過熱した情報からは客観的な距離を取り、冷静な視点を持つことによってのみなしとげられるのではないだろうか。



翻訳:藤原寛明

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